━木耐協情報通信 Vol.348━━━━━━━━━━━━2016年7月5日━━ ◇◆ 思ったとおりだった! ◆◇ 建築年数による木造住宅の地震被害傾向について ―――――――――――――――――――――――――――――――― 木耐協事務局です。 今週は、既報(vol.344)でお伝えした熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会(建築構造や設計の専門家ら25人で構成)の第2回目の 会合が6月30日に行われ、配布資料が公開されていますので、木造建築物 についてのデータをご紹介します。 まずは、被害の大きかった益城町中心部での構造別・建築時期別の被害 状況データからの抜粋です。 【木造建築物で倒壊・崩壊と大破した棟数は・・・】 昭和56年5月以前の木造建築物は702棟中349棟(49.7%) 昭和56年6月以降平成12年5月以前の木造建築物は800棟中151棟(18.9%) 平成12年6月以降の木造建築物は242棟中17棟(7.0%) 旧耐震の住宅の約半数が倒壊・大破している結果は残念ながら予想通り の感があります。また、新耐震といわれる昭和56年6月以降の住宅でも、 平成12年5月以前の住宅はおよそ5棟に1棟の割合で倒壊か大破しており、 こちらもある程度予想していた結果となりました。 平成12年以降の住宅はまず安全だと思っていましたが、これは我々の予想を 裏切る結果となっており、築年数による「安全神話」は存在しないと実感する 結果となりました。 さらに、木造の被害状況報告において、同じく益城町中心部での新耐震以降 で倒壊してしまった木造建築物の特徴と分析も発表されており、そのデータを 紹介すると・・・ 【昭和56年6月以降の新耐震でも倒壊してしまった対象物件99件のうち・・・】 筋かい端部の接合仕様を確認できた70棟のうち、接合仕様が不十分であった ものが51棟(72.9%!) 柱脚柱頭の接合仕様を確認できた94棟のうち、現行基準の接合仕様を満たし ていないものが90棟(95.7%!) このデータの対象は昭和56年6月以降の物件ですので、平成12年6月の建築 基準法改正前の物件が大半を占めています。よって筋かいの接合仕様が 不十分であったり、柱脚柱頭の接合仕様が現行基準を満たしていない、 いわゆる「既存不適格建築物」として多く存在しています。 これらの不備が直接的な倒壊要因とまでは本データ上では言い切れませんが、 倒壊する可能性が極めて高くなった原因と言えるでしょう。 旧耐震住宅の危険性はもちろんですが、新耐震でも平成12年基準法改正前の 住宅は接合部やバランスにおいて危険な住宅が多く存在すると、木耐協では プレスリリースなどを通じて以前より発信して参りました。今回、残念ながらその 内容が結果として出てきてしまっています。 リフォームや仲介において、この時期の木造住宅に関しては、自信をもって 耐震診断・耐震改修を勧めていただければ幸甚です。 本委員会では今後、耐震基準の見直しなども含めて議論し、9月には倒壊原因 や防止策について最終報告がまとめられる予定です。
木耐協事務局からの情報通信による